April 2008アーカイブ



男女の価値の逆転 - 迎撃blog


単純に男女で区切ったけど、さらに細かく区切れば「良い女性ほどはやく結婚している」という条件を足してみる。そう考えると、価値が暴落していくのがすこし早くなる。



個人的嗜好においては27歳くらいの女性が最も好きだけど、25歳くらいからの肌の荒れ様は結構効く。ましてや、煙草なんて吸ってる女性が多いものだからさらに肌が荒れる。相手に求める条件として「煙草を吸わないこと」なんて考えてたけど、この条件でさえ現状は厳しく思える。



そう考えていくと、年上好きではあるけど年下の方が良いかなと思うようになる。年上の女性から最も旬な時期を与えられずに「結婚したい」とせまられても、「それは出来ないよ」と。ルール違反だと言いたい。



25歳までに付き合い始めて2年くらい付き合って27歳で結婚、前の会社の女の子はこのコースを辿った。27歳から価値が下がると考えての判断だったのか分からないけど、2年間の旬な時期を与えるかわりに責任取ってねって意味なんだろう。



そんなんで、良い女性ほど見定めの時期を上手に乗り切って結婚している。良い人なら男が手放すはずがない。25歳からの大切な時期にフラれたり売れ残っている女性は、やっぱり何か欠けていたんだと思うしかない。今の会社で仲良く話せる女の子は自分より2個上で、見定め時期を越えている。そう考えると何か欠けていたのかな、と疑いの目を持ってしまう。



どうあれ、どんな女性からでも全く好意をもたれないのは、自分も何かしら欠けているからなんだろうけど…。



年上好きだけど、年上と付き合ったことない。年下も別に嫌いじゃないけど、付き合ったことない。ましてや、同い年も…。よし、死ぬか!





「GWの予定とかってある?」



と前日の朝、会社の女の子に聞かれた。低血圧でモチベーションも上がらず、無言で作業する気だったけど気を遣ってくれたのか話しかけられた。普段も朝はなかなか挨拶できなくて、仕事が落ち着いてきた10時過ぎに「おはよう」って彼女から声掛けてくる場合が多い。



「GWの予定?うーん…」



なんて自分から言い直して、朝の回転しない頭で考える。すこし前に日記で書こうと思った会話のシミュレーションを思い出し、「ああ」と気付いたような返事をする。



「前に話したと思うけど、前の会社で仲良かった女の子と会う予定です」


「そうなんだ…」



なんて彼女も素っ気ない感じをする。話を広げるためにさらに続けるように言う。



「人妻とデートしてきます」


「あはは、なんかキミが言うと面白いね」



そうそう。そういうキャラじゃないよね、自分。なんて心の中で軽くツッコミいれて、テンション上がらなかったので少し黙って仕事を続ける。朝のテンションは低い。



「…それって、キミの方から誘ったの?…それとも、向こうから?」


「え、いや。自分から電話しました」


「2人きりで会うの?」


「うん…」



探りいれられてるなー、なんて思った。



“自分から誘う=相手のことが好き


相手に誘われる=恋愛感情じゃないかも”



とか、たぶんそういう質問の意図なんだろう。「自分から誘った」という選択肢を選んだ結果、恋愛フラグがなくなりました。



自分の場合、女の子と親しい関係になりそうになると、別の女性と親しくして嫉妬させたい!とか思う、ちょっとメンヘル思考がある。それでも、自分のことを好きって言うなら良いみたいな。良い性格じゃない。心理学的に調べたら幼少期のトラウマが~とか書かれてそう。



別に彼女と親しい関係になる気はあんまりないけど、「自分は積極的なタイプだ」と彼女は自負してたので期待半分、恐怖半分…。





「なんかさ、温かいのか冷たいのか分かんないね」




会社でよく話す女の子はわりと素直で健気な感じ。何でもオープンなタイプと自分で言うくらい。そんな彼女に対して彼女自身が弱気にならないように色々とアドバイスもしたし、本を貸したりもしていた。それから2週間くらい経って、彼女に近付き過ぎていた自分を見直して少し距離を置こうと思っていた。



それでも話すことは多くて、上手く互いの距離感を保てずにいた。そして、今日も雑談を交えたあとに彼女は自分の机の整理をしていた。片付けるのが好きなのかな、なんて考えてると彼女から声を掛けてきた。



「この借してくれた本ありがとう。」



うん、と答える。続けて彼女が言う。



「これ、まだ借りてても大丈夫かな?」


「あ、全然良いよ」



なんて会話をして、彼女のためになったのなら良かったなんて安心していると、彼女は不安そうな表情で言う。



「キミってなんかさ、温かいのか冷たいのか分かんないね」



だって。素っ気ない態度だと思われた。



全然そんな気なくて、普通に接しているつもりだった。だけど、上手く感情を表現できない、自分の気持ちを言い表せない。自分の中で納得して、それが相手に伝わっていない。どこか他人に恐怖に感じて、悟られないようにしている。そんな無意識に避ける癖が冷たいと思われるんだろうな…。



「なんでかな、別にそんな気ないんだけど…」



なんて答えた。少し距離を置こうかとしていたことは事実なんだけど…。女の子の見抜く力みたいなものは凄い。そういう瞬間は、もの凄く恐怖を感じて心を閉ざす。心が見透かされているような感覚は苦手だ。



また少し過去の話を彼女に対して言ったときがあった。



「自分が入社したときは、またキャーキャーワーワー言ってるなーって思ってた。」


「そっかな…」



少し前の自分のことを思い出して考える様子の彼女。そして少し微笑んで指差すように言う。



「…泣いてたね」



いや、泣いてなんて…と反論しようと思ったけど上手くタイミング逃した。悪口にならないような程度の些細な意見の衝突。ちょっと良いなと思った。それと最近ドキドキした女の子の癖は、机などに落ちている髪の毛のくずを中指で引っ付けて下に落とす行動。人差し指と小指をすこし立てた感じが可愛らしくて良い。





女は30まで結婚しないとダメ、なんてことをよく聞く。逆に、男は年齢制限みたいなものがない。ということは逆算で考えると、30目前の女と普通の男ではだんだんと価値が逆転していくと考えられる。30目前で焦った女は妥協をはじめ、今まで見向きもしなかった男も視野にいれるだろう。



そういうことを考えていくと、自分より少し年上の女は妥協しはじめている段階である。人生にはモテ期があるのと同じように、価値の逆転期みたいなものもある。モテ期すら来なかった自分にとっては楽しみでもある。相手に妥協される、というのは少し悲しい気持ちでもあるし、それでも「付き合って」なんて、お願いされたら…。




「だが、断る!」





“今の自分”があるのは自分の力だけで努力して磨き上げ、成長してきたからだと思っていた。だけど、それは間違いだった。



自分の周りにいた人が自分の成長の糧になる。人は自分の力だけでは成長なんて出来なくて、周りの人間によって成長できる。親しくしてくれた人、アドバイスをくれた人、間違いを教えてくれる人。上京していろんな人と出会って成長し、今の自分があるんだと改めて実感した。



自分の過去を振り返ると、その原動力となっていたのは女の子が多いように思う。勝手に片想いしてみたり、その女の子のために頑張ってみたり、感情移入してみたり…。恋愛には発展しないんだけど、想いが人を強くする。そういう時間が成長する糧になっていたのかもしれない。




“自分よりも他人のことを心配する”





簡単で当たり前のことに思えるけれど、実現できてる人は社会にはあまり居なくて。自分が犠牲になる、そういうことを必要以上に怖がる人が多いようだ。結局人はみんな自己中心的で他人のことを構っていられない。



以前の会社で親しくなった女の子は、こちらが不安になるくらい他人の心配をしていたように見えた。ギブアンドテイク理論で彼女から貰った100の優しさを100返そうと思っていたんだけど、もう結婚して遠い存在となり、現在でも60程度しか返せてないと思う。



彼女から100貰った分で返せなかった分、それは彼女ではなく他人に優しくすることで返すことにしよう。きっと、そういう循環で人は成長していくんだから。




顔が好みだから付き合う、簡単な公式のはずだけど問題は複雑だ。



関係を持つ以上、体以上の対価。付き合うことで人として成長できるとか、その人のために頑張れるとか、物理的な満足ではないもの。そういうことを自分は求めているんだと思う。




精神的な安らぎ?将来の不安の解消?2人共通の目的?




人として当然のことをして好意をもたれ、人付き合いで当然のことをできなくて嫌われる。好意をもたれることは怖い。興味を持って近づかれて見抜かれるのが怖い。そして好意をもたれないように逃げ回り、自信がないことを見破られないように自分を隠してしまう。




そんなこと付き合ってから考えれば良いじゃん。




恋愛ハンデが大きく臆病になっているだけなのか。それとも理想が高いだけなのか。




ほんとに好き同士で付き合えるのって学生時代だけで、それ以降はどれだけ相手に妥協できるかで相手が決まる


懐く - 迎撃blog




手を差し伸ばしておきながら、自分が手を差し伸ばされそうになればその手を避ける。いつになれば互いの手は交わり、互いを助け合える関係になれるのかな…。



仕事と恋愛は別物だ。




いまのうちから、GWに会う予定の女の子に色々対策をしておこうと思う。あと2週間、どうなるんだろう…。まずは前日の会話の復習から。



「わたしは来週くらいが忙しくて無理だから、再来週あたりなら大丈夫なんだけど…」


「えっと、じゃあGWかな。予定とか大丈夫なの?」


「どこに行く予定もないから、あ、彼女とか居たらごめんね」



ここで上手にスルーしたけれど、こう言うべきだろう。



「その席なら空いてるよ、いつでもキミが座れるようにね」



まさに人妻キラー。


妊婦

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前の職場で好きだった背の低い女の子に電話してみた。



「久しぶり、元気?」



なんて普通の会話をする。1年くらい話してないから変に緊張してしまう2人。最近の彼女はまた働き始めているようで、マーケティングとか担当しているらしい。あれこれ含めて、別れてから1年近く経つし色々話したいという様なことを伝えた。



「うん、全然良いよ。でも、あんまり無理できないよ。妊婦だし…」



よし、死ぬか!



「わたしは来週くらいが忙しくて無理だから、再来週あたりなら大丈夫なんだけど…」


「えっと、じゃあGWかな。予定とか大丈夫なの?」


「どこに行く予定もないから、あ、彼女とか居たらごめんね」



なんて会話を上手く受け流して、再来週に妊婦さんに会ってきます。



「大きくなったお腹も見れて良いんじゃない?」



と楽しそうに彼女は言うけど、傷口をさらに拡げられるような気分になる。死のっかな…。いや、会うまでは生きる希望なんだけど、その先に絶望が待っているような気がしてならない。まさにジェットコースターだな。



上の話とは関係ないけれど、職場の女の子にいろいろな話してたら、



「なんか詩人っぽいよね、例え話とか上手いし理解しやすい」



と言われた。こんなところで日記書いてる成果だしてどうするんだよって…。




会社の女の子に仕事の進め方に関して、自転車のチェーンのように緩みをもたせて仕事をしたほうが疲れなくて良いという例え話をした。彼女は頑張りすぎて常に100の力で仕事をしていたので、いつか限界がくるから、いつも80くらいの力で頑張れば良いと伝えた。



「キミと会う前までは100の力で仕事こなしてたけど今は全力ってこともないんだ、すこし楽に考えるようになったよ」



と以前の状況を思い出して少し笑う彼女。彼女に続けて言う。



「なんか、自分がカウンセリングの先生みたいだね」



と言うと、彼女もすこし微笑む。いつも100の力を求められて仕事を押し付けられて、そんなに頑張らなくて良いと言ってくれる人がいない。優しい言葉はかけるけど利用することしか頭にない、そんな人たちばかりな会社だ。





“女性を誉めるときは、女性の持ち物を誉めると良い”




会社の女の子にプレゼントを渡す。脳内想定では彼女はまず値段を聞いてくる。



「これいくらくらいしたの?」


「いや、大したことないよ」


「でも悪いから…」



と財布を取り出しはじめる彼女。



「雑貨とかたくさん買い込んで2万円くらい使ったから、プレゼントの値段とかは全然覚えてない。」



困ったような表情をして考え込む彼女に対してこう言う。



「じゃあ、そのうち喫茶店とか行ってさコーヒー奢ってよ」



うん、大人大人…。なんて考えてたら、全く値段に触れる素振りもなかった。プレゼントの値段聞くのも失礼だと思うしね。とにかく、朝は他の女の子の夢に見てテンション下降気味だったのであまり会話も弾まなかった。



プレゼントを渡したあと彼女に聞かれる。



「紫色の服なんて珍しいね、どうしたの?」



彼女はわりと紫色の服を着ていることが多く、出来心でその色に合わせてみたかった。パーカーの色で紫を抑えてるにしろ、彼女の目にその紫は異質に見えたようだ。



「え、いや。合わせようかなって思って…」


「そう言うと思った」



と笑顔を見せる彼女。意識的に紫色に合わせた意味に気付いたらしい。



「これ着てみたけど、紫はあんまり似合わないんだよね」


「そう?たしかに、あんまりイメージにない色だけど…」



そこで彼女も紫色の服を着ていたので、彼女の服を指し。



「イメージ的に紫は似合ってるよね」



完璧。女性を誉めるときは、女性の持ち物を誉めると良いというセオリー。「ありがとう」と彼女は嬉しそうに笑った。そんな会話を交えたあと、今までよりも声の出し方が甘えた声っぽくなった気がする。可愛い声の出し方してた。





「わたしに強く言えば、どんなことでもやってくれるから…」



彼女がたまに言うセリフ。面倒な仕事を押し付けられて本人は負けず嫌いだからそんな仕事でもすると言うけれど、そうでも考えないとやってられないんだと思う。本当はもっと自分の仕事に集中したい、そう思っているはずなのに。



彼女は強引にせまられると弱いタイプで、強く言えばどんなことでもやらせてくれる…。とか、そんな妄想をだね。




テレビの放送作家が作ったり、あたかも脚本に書かれているような瞬間が見えると、それまで番組を見てても興ざめする。まず脚本ありきで出演者を決めて、書かれた内容で面白いと思う瞬間を作る。ご丁寧にテロップまで入れて、笑いどころだからと効果音までいれる。編集で余計な部分はカットして作られた不自然な自然。



だけれど、面白い瞬間は何もテレビで作らずとも日常にたくさん潜んでいて、そういった日常を自分はブログに書いているのかも知れない。




“テレビドラマのような出会いはないし、恋愛ドラマのような都合の良い展開、波乱もない”




だけれど、ドラマは人間の恋愛の始まりから終わりまで見せるから魅力的に見えるのであって、終わりが全く見えないリアルな現在進行形の恋愛、いつ結婚して終わりが見えるのか想像が付かないドラマ。そう考えると、一瞬一瞬が魅力的であるから楽しいと思えるようになった。



作られた世界は作り物でしかない。



自身が自身の脚本家であり演出家であり出演者、しかも主役である。そう考えられる人はテレビはつまらないと思うんだろうか。自分はまだどこかで、現実逃避癖が抜け切らずドラマを見たりアニメを見たりする。それは、どういった脚本で人を魅了して楽しませているのか?エンターテインメントとは何か?と納得できる答えを探しているからかもしれない。それとも、登場人物に感情移入してどういうコミュニケーションをとれば仲良くなれるかという分析をしているからか。



楽しいと思える瞬間は、書かれた脚本に対して上手いと思うときである。バラエティなんかの作られた笑いは決して楽しいと思えなくて、それなら完全にフィクションであるドラマやアニメを見る。教育を目的としたアニメには道徳なんかに絡ませて面白く、ちょっと泣かせる話もあったりする。



映像や音声の要素をまとめるという目的は一緒なのに、バラエティはやや雑然としてギャーギャー騒いで効果音も過剰に使いすぎて、どうも自分の感情に干渉されている感じがして居心地が悪い。逆にドラマやアニメはノイズが少なく音のまとまりに優れ、音楽の使い方や音量、俳優、声優の声の聞きやすさがあって、ノイズが少ないからか感情への干渉は少ない。音響なんかを担当しているなら、同じテレビでも断然ドラマやアニメ班のほうが良い仕事してる。



いつになったら自分の人生というドラマを心から楽しみ、テレビの呪縛から逃れられるんだろうか…。




プレゼント


彼女に頼まれていたリングノートのプレゼント。



びっくりだよな?全然ノートの形してない。という、デザイナーとして本気を出してみた。中身はカバー付きのリングノート、色はマゼンタです。自分で言うけどすっごくお洒落。中に千切りされたピンクの紙も入っていて、感触がくしゅくしゅするから凄く可愛い。3月終わりの彼女の誕生日よりもお金かけてる、ふしぎ!マゼンタ100%と白の組み合わせや、ラッピングが透明だから中が透けて見える感じとか、好き好き大好き。



ここで、前回端折った会話部分を思い出す。



「この前頼んだリングノートだけどさ。」


「うん。」


「実は使いたい内容って言うのはさ…」



何故かここで間を置く彼女。どう言おうか考えている様子だったので、彼女の言葉をさえぎるように言う。




「デスノートでしょ?あいつは何日に死ぬとか書いて…」



と言うと笑い出す彼女。反応が可愛かった。で、本当の目的を聞き出したわけなんだけど。こんな豪華仕様のリングノートプレゼントしたらどう思うのかな?惚れちゃう?



バイトしてた頃に同じバイトの女子に雑貨のプレゼントを渡したときには



「こういうの彼女とかにプレゼントしたらすっごく喜ぶよ!」



なんて言われたけど、彼女いたことない。まさに才能の無駄遣い。別の会社で女の子にプレゼント渡したときは、ラッピングがお洒落目だったためか自分の挙動不審ぶりのせいか、指輪と勘違いされて別の場所で開封していた。サイズもちょうどそれくらいの小物だったしな。そして今回は…。



クッション



最終的にはこう寄り添って寝る男女に。



なんて、気はあんまりなくて…。彼女とは正反対とも思える趣味や思考であり、どちらかと言えば彼女の方が行動的でよく飲み会に参加して男っぽいし、自分は家で料理作って待ってるようなタイプだ。煙草を吸う彼女に、煙草嫌いな自分。周りにオープンな彼女に、クローズな自分。恋愛経験豊富な彼女に、ほとんど未経験な自分。男女逆だったら普通の恋人になれたような気がする。



運命はなんて残酷なんだ。




ついに家でAT-Xが見れるようになって幸せ。アンテナ買ってから2ヶ月でようやく開通とかありえないから。とにかく不安要素がたくさんあったけど、念願叶ってBS/CSの最強モード突入。




話が前後しているけれど、午前中こんなことがあった。



「問題の解決方法はこっちだと思うんだけど…」



そう言って、彼女にハロワで検索した仕事を何件か見せる。周りの意識を一生懸命変えるよりは、環境自体を変えたほうが彼女にとって良いと思った。もう自分が出来ることはないし、一番手っ取り早い。



「今の会社に恩とかあれば別だけど、特に思い入れもないならこっちも良いんじゃない?」



うんうん、と頷く彼女。



「やっぱり、今のここの会社はあんまり良い人がいないと思う…」



と彼女に言った。これは事実だし、学ぶことも無いだろうと自分がこの一ヶ月の間に感じていたことだ。すると彼女も



「そうだね、わたしもそう思うよ」



と同調する。さらに続けて彼女は言った。



「新しく人が入って一月くらいで引継ぎしたらボーナスがもらえる時期だし、そしたら辞めようかな…」


「最後には全部放棄してさ、思いっきり迷惑かけて辞めたら良いじゃん」



それは、彼女の最後の復讐のチャンスだしどれだけ周りが彼女に仕事を押し付けていたのか、そういう理解させるために薦めたのだけど、彼女は「そういうことはしない」と言った。責任を人から押し付けられても、わたしは人に責任を押し付けたりしたくない。と前に彼女は健気な感じでそう言っていた。



「あ、そういえば…」



と彼女の言葉のあとにカレンダーを見ながら話を続ける。



「自分も3ヶ月の試用期間終わったらちょうど6月かな。」


「あ、じゃあ一緒に辞めちゃう?」



なんて意気投合。さらに彼女が口を開く。



「辞めた後でもアドレス交換したりしようね」



「そうだね」なんて答えて、辞めたら途切れそうな関係にすこしセンチメンタルな気分に浸っていると彼女が思い出したように口を開く。



「この前頼んだリングノートだけどさ。」


「うん。」


「辞めるまで教わることたくさんあるから、それのメモを取るのに使いたいんだ…」


「なるほどね。でも、もう色々伝えたしそんなに教えることないかもよ?」



と言ったのだけど彼女は答える。



「まだあるよ。だから、辞めるまでいろいろ教えてね。」



だって。辞めるの確定なのか、とすこし悲しい気持ちになった。けれど今の会社のくだらない仕事で彼女の才能を潰し、埋もれさせてしまうよりは確実に良い。



良い方向に向いてるはずなのだから、悲しむ理由なんてひとつもないんだ。




会社の女の子と毎日同じような話をしているのかも知れない。会社の独身男の責任の取り方について彼女から話をされた。



「だから、あれは酷いよね」


「うんうん、自分がフォローしないで誰がするんだって話だね」


「そう、わたしもびっくりしたよ」



なんて談笑をしていた。すると彼女が続けて言う。




「この前わたしに聞いたよね?関係どうなんですかって…、あんなのだからアイツに好き好きって言われても絶対に相手にしないんだ」



と笑って見せた。



彼女の話を聞いてこの件がない状況で独身男から好き好きってアピールされてたら付き合うってことだろうか、とも思った。女の場合は先に相手の内面を見てから判断する、というよりも好きと言われてから内面について思考するに近いのかな。とりあえず自分もアピールしてみたら付き合えるかな?それとも、そうなると最初から行動した全てが結局は性欲みたいなものに直結していて自己嫌悪に陥るのか?生き方の問題ってすごく複雑だ。



そんなことを真剣に考えていると、彼女が嬉しそうにこちらにやってきた。




「これ、出来たよ」



以前、彼女の仕事で誉めてあげた扇子の見本が届いたみたいで喜んでいた。お洒落だねなんて誉め言葉をおくった。営業を担当した独身男も彼女の喜び方を見て、また来年作りたいねなんて言った。すると彼女は少し天井に目を向けながら思いついたように言う。



「今年はこれ持って、花火とかお祭りとか行きたいなぁー。…あ、でもその前に彼氏とか作らないと。」



だって。



「じゃあ、一緒に行く?」



なんてセリフが出るはずもなく、何故か別のことが気になって独身男に言う。



「ちなみにこれ単価っていくら何ですか?」



もう恋愛よりも仕事のほうが大好き。




そんなことがあってから、午後。今日は彼女の機嫌が良いのか、お昼戻ってきて席で資料整理してると後ろから話しかけられる。



「おっす!」



すごい可愛い声。誰だか全然気付かずに2回言われたあと振り向いてみたら、彼女だった。ねこなで声を出すな。




「今日はお昼ちゃんと食べた?」



と聞かれた。というのも彼女を助けられないかも知れないと1人で落ち込んで、食事が喉を通らなかった日がありそのことを覚えていたようだ。



「うん、今日はカレー食べてきたよ」



なんて言うと、「そっか」と嬉しそうに言う彼女。ずいぶん機嫌が良いみたい。数時間後に彼女の席に行き仕事の話をしていると、やたら彼女がこっちの顔を覗き込んできた。ちょっと目がとろーんとした感じで、恋愛感情なのか何なのか女性恐怖症のあまり彼女の目を見れなかった。





「お前仕事しろよ!」




そんな怒鳴り声から始まる。そうして彼女はまた弱気に謝っていた。全部わたしが悪いと思い込んでいる様子だった。どうして自分が失敗したのか原因が分からずに悩んでいるとき、周りから散々お前は出来ない、使えないと言われて正直にそれを信じてしまっている。まるで洗脳のように、出来ないと言われ続けた結果が今の可哀相な会社の女の子。



周りはそれに対して、仕事多くて大変だね、怒られて可哀相だね。と同情するような言葉をかけるけど、火の粉が自分にかかりそうになると「関係ありません」という態度をとる。彼女が失敗したのが悪いんでしょ?とでも言うように。それでも、面倒な仕事を彼女に押し付けて自分たちは雑談していたり。仕事を押し付けられた彼女も健気に指示に従って、過剰にサービスする。そして徐々に自分の仕事時間が取れずにミスをしてしまう。そして怒られる…。



こんな状況を見せられたら、普通なら誰だって助けるだろう?だけど、みんな優しい言葉をかけるだけで誰も解決するような行動をとってない。唯一、味方だと思っていた独身男も恋愛感情だけで動いていて、いざ怒られそうになると自分じゃなく、彼女の仕事が遅いからですと逃げたようだった。




“世の中のすべてのインチキに蹴りを入れてやる”




攻殻機動隊に出てくるセリフだけれど、自分の感情はこっちに近い。おかしいと思うことはおかしいと言うべきだし、今の状況で彼女が押しつぶされてしまうのはあまりに残酷だ。自分が行動しないで、誰が彼女を救えるんだろう。



正直なところ、上司に一発蹴りを入れて「ふざけんな!」と言って解決できたら良いのだけど、世の中ってそんなに単純でもない。ましてや、自分じゃなく他人の問題だからなおさら。




「自分は会社辞めても良いと思ってるんですよ、犠牲になって問題が解決するなら」




そう彼女に言っていた。そして、実際に行動も起こしていたはずだし社会は変えられる。かならず良い方向に行くはずだ。そう思っていた。でも、結局は社会という大きなモンスターに小さな声が飲み込まれただけだった。自分はなんて無力なんだ。そう思った瞬間に悔しくて涙が出た。




“未成熟な人間の特徴は、理想のために高貴な死を選ぼうとする点にある。



これに反して成熟した人間の特徴は、理想のために卑小な生を選ぼうとする点にある。”




犠牲なんて言葉を使ったけれど、そんなことで解決するなら安い問題だ。まだまだ自分は未成熟な段階なんだ。それなら、彼女を守れる立場にいながら自己保身をするような独身男が大人の対応か?と問われれば答えはNOだろう。結局彼は自分のことしか興味がないんだろう、彼は卑小な生を選んだ。



独身男は、ことあるごとに彼女を呼びつけ



「僕はこういうことがしたいんだけど…」



と彼女に仕事をまわす。それはただ自分が彼女と接したいから。なぜなら、全く関係なさそうな案件でも彼女を呼び出し確認をお願いしたり、くだらない案件だって彼女に手伝わせようとする。きっと仕事出来る自分みたいなものを見せたいんだろう。ただ彼女の前でカッコつけていたいだけなんだ。彼女の都合だって考えず、思い立てばすぐ彼女の名前を叫ぶ。彼女が忙しそうにしていても、雑談をしようと側に来て話をする。別に構わないけど、そこまでするなら彼女が失敗したときは助けてあげるのが普通なのにいざそうなると責任回避。



結果、彼女だけが責められて出来ない奴だ、なんだと怒られる。どうして他の誰も、彼女自身だって問題があると気付かないんだろう。彼女には自分を責めることでしか逃げ場所を作れないのに。



怒られたあと彼女は自分の席に来て、何を言うかと思ったら「仕事のお願いがあって…」と、普通に仕事の話を始めた。それに焦って彼女の言葉をさえぎるように伝える。




「いやいや、それより大丈夫?」




と彼女の表情を読もうと覗き込んで言った。その場では彼女も「うん、大丈夫だよ」とすこし引きつったような笑顔で言う。どうして?なんで?いろいろな言葉が浮かんだ。仕事の話をしたあと、彼女は席に戻った。すこし考えていたけど、やっぱり気になって彼女の席に行く。




「本当に大丈夫?」


「あ、うん。全然平気。慣れてるし。」


「全然怒られるとこじゃないよね。ていうか『仕事しろ』ってしてるだろって。」


「でも、わたしも忘れてたとこもあるからさ…」



と、彼女はどういう状況で自分が怒られたのか説明をはじめた。





「すこし忙しかったし、わたしも悪いんだ…」


「ちゃんと、今言ったことを説明した?」


「ううん、してない。」


「した方が良いよ、『他の人の都合で遅れたからです』って言えば…」



と、言いかけて、言いなおす。




「そっか、そうすると今度は『リマインドかけろ!相手に思い出させろ!』って怒るのか…」



話すことや、自分の考えをまとめることで必死で彼女の方は見れなかった。見てしまうとまた泣いてしまうかも知れないという思いもあったし。そして、彼女に言う。




「でも、全然こっちに責任はないよ。気にすることないよ。」



そう伝えた。それでも、納得がいかなくて彼女を怒った上司の悪口をすこし言った。




「お前がリマインドかけろって、上司のお前の責任だろ」



そんな悪態ついて、彼女の責任じゃないんだよってことを教えようとした。結局彼女の考えが行き着く先が「自分に責任がある」だから考え方を変えさせなきゃいけない。前の日に、何も変えられなかった自分が悔しくて少し泣きそうになった。




「あ、あんまり言うとまた泣くから…」




と、席に戻り際に彼女に言う。彼女はそれに小さい笑顔で答えた。





「泣いてたよね?」



と会社の女の子に聞かれた。



世界は簡単に動かせる。世界は変えられる。会社だって変えられるはずだし、人だって変えられる。そう思っていた。自分には自信があったし、必ず良い方向に導けると確信していた。だけど現実は会社の環境すら思うように変えるようなことは出来なかったし、何より目の前の1人すら救えてないことに自分の甘さ。頼りなさ。結局何も出来ない自分に苛立った。知ったような発言ばかりしていた自分も大嫌いになる。救える立場にいながら結局自分も周りの口だけ優しい人間と同じ存在に思えた。自分には何も出来ない。



何かがおかしいと感じた。そして、悔しい気持ちでいっぱいになった。そういう気持ちを伝えた。すこし落ち着いてと軽くなだめられ、時間をおいて冷静になった頃に再び彼女がきた。




「あのね、お願いしたいことがあるんだけど…」


「うん?」




と冷静に聞いてみると、「メモ帳が欲しい。しかもポケットサイズで可愛い感じ。センスは任せる。」なんてよく分からない依頼。頭にたくさんハテナマークが浮かんだ。そこで彼女に聞きなおす。




「何に使う用?」


「あとで分かるよ」


「それじゃ、どう選んだら良いかわかんないよ」


「だから、センスはお任せするから、ね?」


「うん」


「あと、上にリングの付いてる奴が良い」



「じゃあ今度探しておくね」なんて返事をする。全くどういう展開になるのか想像が付かないので、今後が気になる話題ではあるけど、話は最初に戻る。




「泣いてたよね?」



依頼のあと、そう彼女に聞かれた。さすがに目の前で泣くわけないだろうと甘く思っていた。だけど、上手く伝えきれなくてすこし泣いたのかもしれない。そういう部分は曖昧にしておきたいので、



「…いや、まさか」



とツンデレぶりを発揮。「ふーん」とすこし不敵な笑みを残す彼女。さらに続けてくる。




「なんで、わたしなんかにそんなに優しいの?」


「だってほら、立場が可哀相だから」


「うん」


「もっと良くすることが出来ると思うんだけど…」


「でも、今までのわたしの周りの人は、わたしが大変なときでも放っておいてたし、皆と同じようにそうすれば良いじゃん?その方が楽だし。」


「それもおかしい。普通はもっと助け合っていくじゃん」


「うーん…。」



と考えている様子の彼女。さらに付けくわえる。



「そんなこと言う人今までいなかったよ、みんな自分のことばっかり考えてた」



不遇。どうして誰も彼女に優しくしなかったのか。わりと彼女自身、もう周りに責められすぎて周囲に対して謙遜している。「自分は頼りない、情けない。自分は何も出来ない。」と思い込んでいる。全然そう思えないのに、常に弱気になっている印象だった。すこし自分が手を差し出せば彼女を助けられる。そう思っていたが、問題はそんなに単純ではなかった。それが悔しかった。けれど、気持ちを素直に伝えるのは気恥ずかしい気もあり違うことを言ってしまう。



「そっちで仕事が回らなければ、結局こっちに来るしね」



あ、やっぱりと言う彼女。一言付け加えなきゃカッコ良かったのにな。惜しいことした。




会社の女の子と仲が良い、彼女よりも年上の男がいる。いつも、一緒に仕事をしていて雑談もよくする印象があった。気になる、というより親しくされると以前の自分と仲良かった人を思い出してしまう。



「なんかさ、この2人って仲良いよね。もう付き合ってるの?」



そう周りから冷やかされて仕事をしてきたし、今でもそんな関係が続いていたら良かったのにと過去を思い出すことがあった。



お揃いボーダー - 迎撃blog




そんな経緯で、今の会社の女の子と少し年上の男の関係を探ろうと話題を切り出してみた。




「あの人といつも一緒に仕事してて、仲良さそうですよね」



そう言うと、すこし顔を曇らせて言う。



「なんか、そう見える?けっこう言われるんだよね…」


「え、あんまり良くないの?」


「まあ、それは仕事だから」



予想外にあっさり恋愛フラグを崩せたので心の中でガッツポーズ。相手の男が年上で独身ということまで聞き出せたので、さらに詳しく聞いてみる。



「じゃあ、やっぱり狙われてるんじゃないですか?」


「うーん、なんかね平日デートに誘われたりとかしたよ」


「そうなんだ」


「あと飲み会の席で膝枕してってお願いされたりとか…」


「それで?」


「断ったよ、ていうか蹴りとか入れちゃったし」



と、思い出し笑いしながら語る彼女。



「やっぱり狙ってるんですね」


「まあ、わたしは全然興味ないし。ていうか、嫌いだから。」



そうキッパリ言い切る彼女に、周りに聞こえたらマズいと口に人差し指をして「静かに、控えめに」と彼女にジェスチャーする。しかし、構わずに話す彼女。



「いいのいいの、もうみんな、わたしがあの人嫌いだって知ってるから」



と笑顔で言う。



一方的に彼女が気に入られて言い寄られ、そんな気持ちに気付いていながら上手く逃げ回ってる。雑談を振られても、仕方なく彼女なりに愛想よく会話しているらしい。それを利用して、たまにご飯奢ってもらったり。今後そういう関係になるの?と切り出すと、それは絶対ない!と完全に否定された。あっさり振られてしまって可哀相に。



彼女とそんなことを話したあと、噂の男から電話がかかってきて無茶な仕事の依頼をされていた。



「だから、出来ないって。無理無理無理無理…。」



そう駄々をこねる子供のように電話口に話す彼女。やっかいな仕事を拒否して、ちょっとキレ気味に受話器をおく。すると伝え忘れたことがあるらしく、また同じ男から電話がきて内線をまわされる。大きくため息をして、シャウトする。



「もう、いないって言っといて!」



やっぱり、大嫌いみたいです。





「あんまり言われないことだからドキドキする…」



業務時間終了後の営業会議中に忘れ去られたように自分と会社の女の子の2人だけ置き去りにされ、また彼女の相談にのる。今日も集中的な雑用に悩まされ、怒られたことで午前中はイライラしていたと言っていた。普段は彼女と仲の良さそうな営業の人も、いざとなれば保身に走って責任を彼女に押し付けていた。彼女にそのことを伝える。



「あれは、ありえないと思う。普通は自分にも責任があることを伝えるべきなのに、全部こっちに押し付けていて、ちょっと話し聞いてましたけどありえないですね…」


「うん、それで後から彼の上司からも怒られたよ…」


「やっぱり、可哀相な立場にいると思います。」



可哀相、まさにそれで普通に泣いてもおかしくない。そんな気持ちを込めながら伝えると、彼女は今まで周りからダメ扱いされていたからか、つぶやくように言う。



「あんまり言われないことだからドキドキする…」



よく頑張ったねと撫でたい気持ちを我慢しながら彼女の様子を見ていた。するとまた彼女が口を開く。



「そんなにわたしの心配してくれる人、始めてだよ」



そう彼女は言って、手でこっちを叩くような仕草をする。と、ここまでが現実。妄想でこの後の2人を保管してみる。まずは彼女からつぶやくところに戻る。



「あんまり言われないことだから、ドキドキする…」


「それって恋愛感情ってこと?」


「うーん…」



何故か考えるような仕草をとる彼女。間に困って軽い冗談を言ってみる。



「じゃあ、付き合ってみる?なんて、全然そういう話じゃないよね」


「べつにいいよ」



彼女があまりにあっさりと言うので、もう一度聞き返してみる。



「うん?」


「だから、付き合ってもいいよ。」



よし、これでいこう。





「将来どうなりたいの?」



少し微笑みかけながら会社の女の子に聞かれた。



「やりたいことはたくさんあるんだけど…。」


「うんうん」


「でも、あんまり上手く物事が進まなくて」



と言うと、彼女も自分なりの考え方を話す。自分を変えたかったり、環境を変えたかったり。いろんなことを考え込んで暗い方向のまま話を終わらせるのも気がひけたので、彼女を元気付けるために少し前向きな意見を言う。



「でも、まあ何とかなるでしょ!」


「なるかな…」


「まだ20代だし」


「それならわたしも大丈夫かも」



将来どうなりたいのか、どうなるのか。これだけは本当に分からない。今は自分が出来ることをやっているだけなのに、それなりに周りに評価されているから幸せと言っても良いのかもしれない。けれど、人に才能があると言われてもそんなに嬉しくなくて、まだ全然ダメだと思ってしまう。例えば一生分のお金を持っている人でも、もっとお金が欲しいと思うような。そんな人間が満足してしまう地点。その地点に行き着くことなんて、一生かかってもたどり着かないように設定されていて、満足できないから子供に夢を託して自分はこの世を去る。そんな風にして今の世界が成り立ってきたのかも知れない。




GINZA HANDS



銀座大好きっ子なんでソニプラ、ITO-YA、ハンズを駆け巡ってデザイン雑貨や小物を中心に消費活動してきた。以前、図書館で読んだ古い感じの本。デザインという言葉が独り歩きしていた時代に書かれたであろう、デザイン指南書に書かれていた言葉を思い出した。




“君がデザイナーを目指すなら、まずは女性と仲良くなること。女性は流行に敏感であり、あたらしいものが好きであるので、まず女友達を作ろう。”




というような内容だったと記憶している。自分と仲良くしてくれる女の子なんていなかったし、読んだときは軽い不快感すらあった。女友達なんて必要ない、全て自分でやる。そう思って過ごしていた。けれど、仲良くなりたい女の子もたまにいるのでプレゼントを何にしようか考えて、喜びそうなものをあげたりする。するとその相手からは、



「けっこう、可愛いのとか好きなんだね」



と言われる。センスがわりと20代半ばくらいの女性のセンスが備わっているのかもしれない。そして、ずっと苦手意識のあった女性だけれど、今まで社会に出てから話をしているのは圧倒的に女性のが多いと思う。逆に同年代の同性とは、あまり仲良くなれないから不思議だ。ずっと自分は女性恐怖症なんだと思い込んでいただけかも知れない。




Sakura Cafe



「これ、ラブレターです」



なんて言って仕事の書類を渡す。今まで全く想像ができないほど環境で人は変われる。自然に頭に浮かんだ言葉をそのまま話す、基本的なことが難しくて、上手くしようとするたびに落ち込んで何度も挫折してきたけど、今では普通に接することができるようになれたのかな。暗いという事実は既に冗談を言った女の子にはバレてしまってはいるようだけど。



彼女の話を聞いてあげて、いろいろと仕事を教えていると彼女が不安げな表情になって言う。



「ここ数日でたくさん教えてもらって、全部覚えきれるかな…。けど、がんばってみるね」



わりと責任感の強い子で、きちんとメモを取っていた。「一度言われたことは二度目はない」というビジネスの何とかを実践している感じだった。こっちも最初から完全なものは求めていないし、教えたとしても一度や二度言っただけで覚えきれるなんて思っていないので、少しアドバイスをする。



「一度に全部覚えなくても良いですよ、わかんなかったら聞けばいいし」



すると、ちょっと驚いた様子で彼女が口を開く。



「え、良いの?優しいんだね…」



彼女自身、わりと自分に責任を持ってきてしまうタイプのようで、人から言われたことを忠実に実行したり、何度も試行錯誤して考えて、努力してるんだけど周りからは評価されず都合の良いときだけ利用されている。それでも優しいから、すぐに言われた以上の仕事をして返す。そこをつけこまれて、くだらない雑用、面倒を押し付けられて処理能力をこえたときにミスをおかしてしまい、彼女が非難される。



何だか健気で、彼女が可哀相な気がして、自分が犠牲になる勢いで彼女周辺を警備しています。



たぶん、恋人とかいても好きなだけ甘やかして凄く優しく尽くしてくれるタイプ。わりと何でも言うこと聞いてくれて、どんな些細なことでも気遣ってくれて、相手が不機嫌だとその理由が自分なんだと思い込んでしまい、また優しくする。それで、相手にウザいんだと言われて振られるような。そんな印象の人だ。



でも、お酒好き!とか宣言したり、何か考え込んでどこか別の世界に行ったり、結構忙しい人みたいです。





「わたしはわりと素直に感情表現しちゃうタイプだからさ…」


「じゃあ、わりとオープンなんだ?」


「そうそう。」


「だからみんなに頼まれごととか、雑用とか任されてるのかな。」



彼女は周りに良いように使われている。というか、面倒なことは全部押し付けられてるといった環境でそれを解決してあげようと色々話していた。彼女は真面目というか、責任感が強いというか、負けず嫌いなところも上手く利用されて、多くの面倒を押し付けられて処理しきれなくなった結果、失敗して怒られているなんて最悪な状況におかれている。なので、上手く面倒回避できるような策を考えていた。



「自分の場合なんかは嫌いな人には嫌いって態度してるっぽいです」


「あー、そんな感じだね。ていうか、わたしのイメージでは最初暗いなって思ったけど、今は全然そんなことなかったよ…」



もの凄い勢いで暗いことが見抜かれる。彼女の言葉に怯んでいても仕方ないのでカバーする。



「最初はそんな暗いキャラのつもり無かったんだけど…、だんだん弱点バレてきた?」


「うん、分かってきたよ」



と彼女が嬉しそうに言う。そして目を反らし独りごとのように呟く。



「でも、雑用とか頼まれない分、わたしもその方が良いのかな…」



彼女も自分の立ち位置というのを、客観的に見れてきたようだった。そこでもう少し提案をしてみる。



「だから嫌いな人には嫌いって態度でも問題ないし、合わないなら合わないで良いと思うし…」



と、ある人に対して話題を出してみた。トラブルメイカーなその女性と自分は絶対に雰囲気が合わない。仕事以外で関わることはないと、そんなことを言うと彼女も「うーん…」と少し考え込む。



「わたしもね、自分とは合わない人だと思う。あんまり好きじゃないんだけど、いちおう女の子だからさ…」



なんて、すこしため息交じりで言う。それがとても可愛く見えた。「女の子だから…」の部分が意味深な感じで凄く良い。



以前、別の女性から似たようなことを言われた記憶がある。やはり、女同士の特有の現象で、表面上は仲良くしようねという関係。で、裏ではあれこれ悪口言い合う感じ。



彼女がそんな弱点、というか「嫌い」に近い印象を持っていることを伝えるのは、ある程度の信頼がなければ話せない。単純に男だから話せるとも考えられるけど、今までの経験上だと「どちらかと言えば好き」の感情で見られていることが嬉しい。何にしても、「女の子だから…」の部分が耳馴染みよく可愛らしかった。




わりと話してくれる女の子と、今までの経緯などを話していた。



「就職活動とかもしてるんですけど、やっぱり学歴とかもあんまりないから…」


「そうなんだ、厳しいんだね。」



なんて、他愛ない情報交換していた。彼女は今の自分は仕事ができない、思うように出来なくてイライラしてる状態と言っていた。それがあまりに可哀相なので、改善できるように指摘してあげたり、親切にどうしたら良いのか教えてあげている。彼女自身も他人から言われることで納得したのか、すんなりとアドバイスを受け入れてくれた。そんなことを数分話していると、彼女から見ても自分の会社はレベルが低いと感じたようだった。そんな中で彼女が不思議そうな顔をして聞いてきた。



「何でここにいるの?」



どう答えるか、すこし悩む。「お金のため」なんて言ってもつまらないし、「ただ受かったから」でもない。何でこの会社にいるんだろう?たぶん運命的な何か、魅かれ合う何かに吸い寄せられて…。



「え、え…。何でだろうねー…。」



タイミング的に考え込む場面じゃないので、つい考えよりも先に答えてしまう。もっと違うことを言うべき場面だったのに。例えば



「何でここにいるの?」





A「それは…、君に会うためだよ。」


B「君を助けるために。」


C「運命…かな…。」



そんな、甘いことを冗談っぽく言うべきとこだった。普段言い慣れてないことは、やはり咄嗟に出てこないみたいだ。