June 2009アーカイブ

大局

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「まだ物語は終わっていない。


人生はこれからもずっと続くんだから。」




最終回を迎えて主人公が仲間に言うような言葉。



今はダメでも、それは大きな流れの中の一瞬でしかない。


その流れの中で日々良くしていこうと思う気持ちがあれば、


未来を良くしていくことができると思う。





「昨日はご迷惑をおかけしました」




前日に偏頭痛で会社を休んだため、そんな言葉を言ってまわった。


休んだ日の朝に会社の女の子から電話があった。




「今やってもらってる仕事だけど、休むのならどうするか…


営業担当に連絡しておいてください」




それを異常なほど他人行儀に言われた。


その担当に電話をかけると話し中で繋がらない。


あとでいいかと諦めて気を失った。



目が覚めると彼女の留守電が残っていた。


それは再び担当に連絡して欲しいと言う内容だった。



そんなことがあったので彼女に謝ると、


すごく不機嫌な表情で「電話してね!」と釘を刺された。


雑談とか出来る雰囲気じゃない…。



午後になって、フォローをしにいく。




「あのさ、アイスおごりたいんだけど…」




彼女が振り向くと、続けるようにして言う。




「何味が好きとかって…ある?」




すると表情を和らげて、笑顔を見せるのだけど、


ふと落胆するように溜め息混じりに言う。




「あのね、そういうことじゃないでしょう」


「…うん」


「わたしはちゃんと電話してって言ったよね」


「…はい」


「ちゃんとしてよね!」




そう怒られた。何を言っても言い訳になると思ったので




「ごめんなさい。迷惑かけました…」




そんな風に答えた。


素直に非を認めて謝ることも、勇気がいるんだと感じた。



この事件で彼女との関係は悪化の一途を辿り、


手紙で「嫌われてね?」なんて書いても


「当然じゃね?」と返されそうな、微妙な距離になってしまった。




会社の女の子と仕事の話を終えて、


彼女は隣の空いている席に座り別の作業を始めた。


そこで思い出したように彼女に声をかけた。




「──さん」


「はい?」




そう答えて首を傾け、こちらの言葉を待つように見ている。


それを見てすこし迷い、言葉を慎重に探してから口に出す。




「あのさ…、今度、手紙渡すから。」




彼女は特に気にするでもない様子で「はい」とだけ答えた。


どんな手紙か聞いてくると思ったけど、何もなかった。




ラブレターかと思った?


それとも、転職のこと?




そんな相手の想像を想像してみる。


内容は仲直りのことだけど。



手紙は形に残るし、下手したら他人にも読まれる可能性もある。


渡すことは照れるけど人生は一度しかないし、やってみる方がありだ。


もし他人に読まれていても、相手がその程度だったってだけだし、


怖がっていたら何も行動なんて起こせない。



前の会社の仲良かった子にも何度か手紙渡したことがあって、


今となると、あれも相当恥ずかしい内容だった気がする。


思い出したらベッドの上で手足バタバタするレベルで…。



よし、そろそろ死ぬか…。




他人や周りに失望して現実から目を背けていた。


そして想像した未来に期待して、今を投げ捨てていた。


そんなカッコ悪い生き方を会社の女の子に見抜かれていたんだと思う。




「全力でぶつかってこい」




きっと彼女なら男口調でそんな風に言うだろう。



手を抜いてしまったり、気付かないフリをしたり。


感傷に浸りっきりで他人への関心すら失っていた。



一日一日の今を大事にして、毎日全力を出しきる。


そういう生き方にこそ価値があるんだ。



その女の子は自己表現が強くて、主張もハッキリしている。


そういう彼女に自分が憧れる部分があるんだろうな…。


手紙

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俺、たぶんだけど


──さんから嫌われてるよね



いろいろと迷惑かけてごめんなさい。


これからも仲良く仕事をしたいと思っています。


だから、今度一緒に飲んだりしませんか?


ちょっと悩んでいるので、話し合って、仲直りしたいです。




と、そんな手紙を渡そうかなと。


会社の女の子がこちらを嫌っているように思えた。


あいまいな態度、作ったような笑顔…。



自分は彼女にとって必要ないんだと悲観的になっていた。




「今の場所に留まることはないだろうし、何もかも投げ出してしまおう」




そんな風に逃げることばかり考えている時期があった。



それが続いて、彼女との距離は遠くなった。


今では数メートル、数歩の距離しか離れていないのに内線で用件を伝える彼女。


そのことに凄く傷付いた。悪意はないのかも知れないけれど…。



だから手紙を渡そうと思う。


「お疲れさま」の言葉と缶ビールでも添えてさ。



そんな女の子との仲直りの物語。


どうだろう?


失恋

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自分が想っている人に想いを伝えられないまま、


勝手に相手に期待して1人で失恋していることが多い。


そんな2度目の失恋。




「その彼氏とね、都内の花火大会全部制覇するんだー」




そう嬉しそうに言う彼女。


死んだ。完全に。


去年、彼女を誘ったけど駄目だった。この敗北感。



この1年間、彼女と一緒に仕事をして自分は彼女の何を知ったのか。


そんな考えをめぐらせて、結果的に自分のことしか考えてない。


見えていなかったんだと思った。



だから、明日から眼鏡をかけて自分の周りを見てみよう。


イメチェン的な意味で。




マジでキツいなあ…。キツいです…。


自分の力の過大評価と、「自分が楽しかった時期は?」


その問いに「今」とは答えられないこと。



他人に期待して、勝手に失望してきた自分。


他人を信用できないこと。カッコつけてしまうとこ。


上手く動けなくて、それが悔しく思える。



会社の女の子に彼氏ができたんだと。


彼女は嬉しそうに言った。



ある意味で予定調和ではあるけれど、


たぶん心のどこかで期待はしてたんだろうな…。


きっと彼女は自分のことを分かってくれていると。




「他人に期待しないこと」




それはラジオで聞いた言葉だった。


麻生久美子が親友から聞いた言葉だと。


それはとても悲しいことだけれど、他人に期待したって裏切られるだけ。


だったら自分がしたいことをしたいようにする。


それが一番だよ。



そんな話らしい。


自分は会社の女の子に期待をしていたし、裏切られて勝手に傷付いて。


負の感情に汚染されて、何もかもが信用できなくなって…。



この…、なんだろうな…。


ストーリーの主人公じゃない。あくまで傍観者な気分。




生きてる?生きてない?




精一杯に一日を生きること。それがいかに大変なことか。


全力を出さないことは、マジで死に直結してるんだと思う。



頭では分かってるつもりで、ただ悟ったようにカッコつけているだけで、


何も気付けていないんだ。近くにいる人、そして他人の痛みにも。



そろそろ死ぬか…。



それとも、全力で生きてみるのか…。





「これでも、わたしの方がお姉さんなんらかね!」




会社の女の子が酔いつぶれて呂律も回らないように言った。




「今の会社を良くするキーパーソンは誰だと思う?」




そう酔いながら聞く彼女に




「さあ…」




と、言ってから上司の名前をあげると違うと言われた。


後から、自分だと答えられなかったかっこ悪さに気付いた。




「人を信用してないでしょ?」




そう真顔で聞く彼女に素直に頷くと、




「わたしもなんだよね」




と彼女は同意した。



あとは酔った彼女に顔を両手で鷲掴みにされたり、


缶ビールを買っていったら抱きつかれたりした。


ついでに最近よく一緒に仕事をする営業の女の子との仲を探られたり…。



それでも、どれもこれもフラグとは思えなかった。


そして終電も近い時間になり、酔いつぶれた彼女を自宅まで送ることになった。


まさに送り狼。


がおー!




「わたし送って、自分は帰れるの?大丈夫?…バカだねー」




蚊の鳴くような小さな声で言う彼女に、そうだねと答えた。


無事彼女の自宅まで送っていくと冒頭のセリフ。




「これでも、わたしの方がお姉さんなんらかね!」




これなんてエロゲ?



まあ地味に帰ってきた訳だけど…。





「ねえ、これ知ってる?」




そう会社の女の子に話しかけた。




「これさ、今の状況で見せる?」




苦笑するように彼女は顔を向けて言った。


その日の彼女は営業相手に意見をぶつけて疲れているようだった。




「好きじゃなかったっけ?この人…」




ある求人情報を指差して見せると、彼女は興味をもって眺める。


もう疲れて辞めたい気持ちと重なったのかもしれない。


「でも自信ないなー」と独り言のようにつぶやく。


「やってみなよ」なんて後押しをしたけど、彼女の意見は変わらなかった。



そして後日。




「今の状況…景気がよければ一日でも早く辞めるのに!」




そう強い口調で言われた。


帰りのエレベーターで一緒になり話し込むうちに感情的になる彼女。




「あの人とも喧嘩しちゃったしさぁ」




と、上司の名前を挙げる。



それで数分の間だけど、彼女の不満と愚痴を聞いた。


良いアドバイスなんてできなかった。



感情的になる彼女に「よくなればいいけどね」と気持ちを込めて言った。


彼女はそれに対して「でも、変わらないね」と寂しそうに呟いた。