karin: January 2009アーカイブ
「キミも男なんだねー」
会社の女の子にそう言われた。
仕事の案件で商品に合うキャラクターを提案してほしいと依頼があった。
なので1年間、ひきこもりながら描いた経験が
文字通り陽の目を浴びることになり、予想外に商業デビューを果たす。
そうして描いたキャラクターを社内会議で提案する。
それを見た彼女は、しげしげと眺めてから言う。
「やっぱりキミも男なんだねー」
彼女に見せたキャラクターはアニメっぽくデフォルメされた
女の子だったので、その言葉の意味はおよそ
「こんな女、現実にはいねーよ(童貞)」
みたいな。
よし、死ぬか…。
「これやってほしいんだけど…」
会社の女の子から仕事の依頼をうけた。
何ともなく仕上げて見せると、彼女は急に顔を曇らせた。
「うーん…」
始まりはそんな些細な出来事だった。
けれど問題は少しずつ積み重なり、彼女から失望された。
彼女とのコミュニケーションが薄くなったこと。
これがある意味では問題の根本だった。
だからあまり言い訳をしないで連日終電近くまで作業している。
彼女は何だか楽しそうに夜中まで作業をして、
「好きなんだ」
とか言いながら、一緒にお酒を飲みに行くか聞いてきた。
「いや、飲むのはやめとく…」
なんて相変わらずの言い方で彼女の誘いを断った。
そのトラブルで何だか自信喪失してしまい、
結果的に自分の生き方も見失った感じだ。
相変わらず会社の女の子を避けていた。
その空気を察してか新年会をするらしくそのときのこと。
話すこともなく会社の愚痴を言って適当に相槌を打つ。
そんな中で上司と彼女は噛み合わない意見を言い合う。
割って入ることも出来ずに聞き役に徹する。
そんな時間が閉店間際までずっと続いて無口状態。
開放されそうになると、彼女が提案する。
「もう一件行かない?」
いや、俺ずっと無口だったじゃん。
2人で言い合いっこしてれば良いじゃない。
そんな態度で迷っていたら、さらに追い討ち。
「行こ!」
ノコノコついていく。
「何飲む?」
そんな風に最初こそ優しく振舞う彼女だけれど、
その後一切、信じられない程こっちを見てこない。目も合わない。
3人しかいないのに不自然なくらいにね。
2人の言い合いは続いて、経緯を知らないから口も挟めずにいて、
もう帰り際に上司が彼女に聞こえないように小さく言う。
「やっぱ、あの子は聞かないねー」
「気が強いですね」
地獄耳で聞こえたのか、彼女は振り向いて首を傾げて言う。
「何て言った?」
「ううん、別に。」
この2人の喧嘩の証人役みたいな居心地。
てか、あれ?いる意味なくね?みたいな…。
「手伝おっか?」
そう聞くと会社の女の子はいつもこう答える。
「ううん、大丈夫」
だからいつの間にか聞くことがなくなった。
年が明けて、彼女とは雑談をしなくなった。
簡単に言えば空気を悪くした。
そのことを気遣ったのか、彼女に言われた。
「あのね、お願いしたいことがあるんだけど…」
人に仕事をとられることが嫌いな負けず嫌い。
他人に迷惑をかけない信念。
たぶんそんな性格が災いして「手伝って」と言わなかったんだと思う。
けれど、彼女の口から珍しくその言葉が出た。
その理由はわからないけれど、今は彼女への興味はない。
それとも興味がないと思いたいだけかな…。
「嫌いだもん」
「嫌いでしょ?」
「嫌いだろ」
「嫌いなはずだし」
そういう言葉が延々と頭の中でループする。
認められるためにしている訳じゃないけれど、
何も言わず、ただ受け流されるだけじゃつまらない。
だからお互いに興味がないし、接触なんてない。
「俺は料理を上手に撮る男なんだぜ?」
とかなんとかホラを吹きながら撮影した写真。
結婚式の方も無事終了してお疲れ様でした。
次こそ自分が結婚式の主役として、何とかかんとか
今年度になって会社の女の子とまともな会話がない。
必要なときに事務的な話をするだけの関係。
だから二人の距離は大きく離れてしまった。
「怒ってるの?」
彼女はそう言いたげな表情で背中を見ていた。
そして目が合うと彼女は言った。
「あ、ごめん。ちょっと見てただけ…」
その恐縮するような反応に戸惑って、
「今やってるのは…」
なんて仕事の話をして、彼女はうんうんと頷いた。
お互いにそんなに興味がないから、それ以上には進まない。
頼りにされている訳でも、特別に仲が良いわけでもないし。
そんな態度だから、嫌われることはあれど好かれることはない。
彼女が以前言っていた言葉。
「機嫌が悪いときは、その理由を言ってほしい。」
そんなことを気にも留めずにコミュニケーションを放棄する。
ほんと空気読めてない。
だからモテるわけがない。
『生きてるなら動け!考えろ!』
主に恋愛面…ではなく、仕事面で行動を起こすことに決めた。
今以上に大きく羽ばたくために現在の環境は思わしくない。
現状に満足しないことは成長に繋がるだろうし、
いろいろと後悔しないように今のうちから計画を立てて行動を起こそう。
これが最後の、少しの勇気で出来る最高のジャンプになるはずだ。