地雷
「ひとつ、言っていい?」
「いいよ」
「キミはね、一人で勝手に進めちゃうことがあるよね?」
素直にそれを認めて頷くと、会社の女の子は続けて言う。
「この会社には地雷があってね…」
「地雷って?」
「うーん…。言っちゃいけない事とかがあるのね。それは分かる?」
「うん」
「一人で進めてると、いろんな地雷を踏んじゃうことがあるから。
そうすると、わたしも困るの…」
そんな忠告を受ける。
どうしようかと考えていると、それを遮るようにさらに彼女は続ける。
「ついでにもう一個、言っていい?」
「いいよ」
「たぶんキミは、言った内容をあまり理解してないよ」
「そうかな?」
そう反論すると、彼女は迷うことなくそうだよと言った。
さらに付け加えて言う。
「聞いてるときは、うんうんって頷いてるけど、ほんとには理解してないと思うのね」
「そんなことないと思うけど」
「わたしからはそう見える」
「うん…」
「…ちょっとさ、ノート持ってきて」
そう言われて席を立ち、コピー用紙とペンを持って行くと彼女は首を横に振る。
「ううん、大事なことを書くノート」
それから彼女は大事なことを伝え、それをメモした。
すこしでも疑問に思ったら、まず報告すること
それがきっと地雷を避ける最良の手段なんだろう。
そのあとで、彼女は周囲を確認し小声で話す。
「わたしは社長も信頼できないし、上司も信用できないと思ってる…」
自分からは彼女と上司の関係がとても不思議に見えた。
これは内緒ね、と彼女は付け加えてからしばらく話し続けた。
それから一息ついて彼女は言う。
「キミを信用してるから、こんな話してるの。それは分かるよね?」
瞳の中を覗き込むような視線で言う彼女に、
必死で目をそらさないようにしながら、それは大丈夫と答えた。
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