以心伝心
「ね、わたしたちは通じ合ってるよね?」
明日からの夏期休暇のため、会社の女の子と仕事の大詰め作業をしていた。
彼女との口数は相変わらず減ったままだけれど、
たまには構ってよとでも言うように簡単な仕事を持ってくる。
そんな小さな接点から、彼女の仕事に付き合った。
そのことで彼女とその上司、自分とで話し合っていたときのこと。
「これはJPGじゃなく、いつもの形式で」
彼女はそう事務的に言い、それに簡単に頷いた。
それを見て上司が不思議そうな顔で言う。
「え?なんで?JPGじゃなくて良いの?」
「うん、そのほうが軽いからね」
年の離れた恋人に言うように彼女は簡単に理由を述べたけれど、
ずっと頭に疑問を浮かべて理解していないようだった。
彼女は笑いをこぼすように、すこしだけ息を漏らす。
その様子を見ていたら彼女と目が合った。
人差し指で行ったり来たりするジェスチャーをしながら言う。
「ね、わたしたちは通じ合ってるよね?」
それは決して心が通じ合っているではなくて、
あくまで理解のことだけだと感じて寂しくなった。
もっと心に踏み込む勇気があれば、
彼女との関係も何か変わっていたのかもしれない。
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