夢の同棲生活

| | コメント(0) | トラックバック(0)




「うん、戻って来るまで鍵閉めとくね」


「わかった」


「ちゃんと携帯持った?」


「…うん」




朝方、会社の女の子にメールを打って遅めの休日出勤した日。


会社に着くと彼女が笑顔で待っていた。




「今日、あの人は?」




そう上司の名前を告げると、彼女は首を横に振った。




「何か予定あるんだって。だから今日は来ないよ?」




思いがけず会社で2人きりになる。


そんな状況下だからか普段以上によく喋る彼女。


これはこれで、何だか同棲疑似体験って感じ…。




「ちょっとコンビニ行ってくるけれど、何か買ってこようか?」




そんなことを聞くと、彼女は辺りを見回すようにして言う。




「うーんとね…。今はないから大丈夫。」




そう答えた。出掛けようと玄関まで行くと彼女がついてきて、


念のため鍵をかけるからと告げられた。


コンビニから戻ると彼女は「おかえり」なんて優しく出迎えてくれた。



そんなふうにして2人きりで夕方まで仕事をした。




「あのさ、一杯くらい飲んでいかね?」




彼女はわざと男っぽい口調でそう聞いてきた。


それから近くのコンビニで彼女に缶ビールを買ってもらい


眺めの良い場所に移動して、そこで乾杯した。



彼女は美味しそうに缶ビールを飲みはじめ、


自分はいつまでも慣れない味に戸惑うようにそれを飲んだ。


だから彼女に




「あんまり、美味しそうに飲まないね」




なんて微笑みながら言われた。


そして他愛無い雑談、彼女の明日の予定なんかを話した。



そのまま帰りの電車に乗り、彼女は出口付近の手すりに体を預けた姿勢で。


自分はそれと向き合うようにして彼女の前に立って話した。


普段よりもよく目を見るようにして。




彼女と付き合ったらこんな感じなんだろうなぁ




そんなことを考えながら一生懸命に話す彼女を見る。


けれどそれは、前に見た『好きな相手を見る目付き』とは違って見えた。



このまま何ヵ月後かに、「会社辞めるね」と彼女に告げる自分。


それだけが彼女と話しながら想像していた場面だった。




「あのさ、今のうちに言っておきたいことがあるんだけど…」




そんなセリフをいつでも言えるように準備しながら、


またしまい込んで、結局それを言えるタイミングもなかった。


だから、きっと、このまま…。


トラックバック(0)

このブログ記事を参照しているブログ一覧: 夢の同棲生活

このブログ記事に対するトラックバックURL: http://bearhack.s21.xrea.com/x/mt/mt-tb.cgi/1190

コメントする

このブログ記事について

このページは、karinがMarch 14, 2009 12:00 AMに書いたブログ記事です。

ひとつ前のブログ記事は「頼まれごと」です。

次のブログ記事は「攻勢vs保守」です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。

Powered by Movable Type 4.01