一年目の。
「3月3日…」
会社の女の子の横を通ったときに、そう呟くように言った。
足を止めると、それを待っていたかのように
「だよね?」
と、半分だけ振り向いて横目で見ながら言った。
「うん…」
「ね、最初さ、一年もいるって思ってた?」
「いや、全然」
そう答えながら、彼女に転職活動のことを
知られたんじゃないかと内心考えていた。
素直に伝えるべきなのかどうか…。
「一年か、早かったよね?」
そんな当たり障りのないことを聞く。
それに対して彼女は答えた。
「うん、すごく」
「けれど色んなことあったね」
「なんかさ、一日は長いけれど、あっという間だったね」
大変だった日々の彼女の姿を思い出していた。
どんな優しい言葉をかけたら良いのか分からず
無言で見つめあったまま、ウンウンと頷き合う。
彼女はタイミングをはかるようにしてから言う。
「…だからね…」
そう迷いを見せて間を作る彼女。
それから決心がついたように勢いをつけて言う。
「今度やろう!一年目の記念の!」
省略された言葉が何を伝えたいのか
もう聞き取れるような間柄だった。
「一年目の記念の(飲み会)。」
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