満員電車

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「わたしはそろそろ終わるけど、まだやってく?」




残って残業していたら、会社の女の子に言われた。



「いや、そろそろあがるけど…」




そう答えて彼女と一緒に帰ることになった。



「ちょっとね、用事があるの…」




彼女はそう言って足早に駅に向かう。


だから2人で話す時間はほとんど無かった。



駅に到着して電車が来ると、彼女は混雑した車内に怯むことなく


性格をあらわすように前に前に進むので、位置取りに失敗し、


彼女と向かい合って話す体勢になれなかった。



少しだけ雑談をしたけれど、彼女は興味を持つことなく淡々と受け答えする。


表面上の女の子の顔で、愛想の良い感じで。



降りる間際になって彼女に本当に言いたかったことを話した。



「明日さ…上手くいくと良いね」


「うん、そうだね」


「あれだけ頑張ったんだから、上手くいくと思うよ」




そう言うと彼女は何も言わず、首でうんと頷いた。



電車を降りるときは彼女に「おつかれさま」じゃなくて、


彼女の目だけを見て小さくバイバイと手を振った。


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このページは、karinがDecember 11, 2008 12:00 AMに書いたブログ記事です。

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