満員電車
「わたしはそろそろ終わるけど、まだやってく?」
残って残業していたら、会社の女の子に言われた。
「いや、そろそろあがるけど…」
そう答えて彼女と一緒に帰ることになった。
「ちょっとね、用事があるの…」
彼女はそう言って足早に駅に向かう。
だから2人で話す時間はほとんど無かった。
駅に到着して電車が来ると、彼女は混雑した車内に怯むことなく
性格をあらわすように前に前に進むので、位置取りに失敗し、
彼女と向かい合って話す体勢になれなかった。
少しだけ雑談をしたけれど、彼女は興味を持つことなく淡々と受け答えする。
表面上の女の子の顔で、愛想の良い感じで。
降りる間際になって彼女に本当に言いたかったことを話した。
「明日さ…上手くいくと良いね」
「うん、そうだね」
「あれだけ頑張ったんだから、上手くいくと思うよ」
そう言うと彼女は何も言わず、首でうんと頷いた。
電車を降りるときは彼女に「おつかれさま」じゃなくて、
彼女の目だけを見て小さくバイバイと手を振った。
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