大嫌い!
前日のハードワークによる疲れから遅刻して出社する。遅刻した素振りも、申し訳なさそうな態度もせずに普段どおり挨拶する。
「おはようございます」
会社の女の子にも普段どおりの挨拶をすると、彼女は横目で睨むような感じで素っ気なく返事をする。言い訳しようとも思わず素通りしてそれっきり。彼女が迷惑に感じていた以前の同僚は、連絡無しで2、3日休むらしく、遅刻のような不真面目な行為に対する嫌悪感は人一倍強いのかもしれない。
彼女が怒るような失敗をしたとする。
彼女の信頼する上司である愛称パパが失敗したとすると、彼女は「何やってるんですかー」と、仕方ないような叱り方をするとして、今度は彼女より年下の自分が失敗したとする。すると、彼女は呆れたような態度をとる。
普段から失敗なんて滅多にしないし、彼女の迷惑にならないように心掛けている。けれど気の遣い方が間違っているようだ。静かにして態度に出さない謙虚さより、大声で迷惑掛けるようにぶつかっていき、一緒に問題解決したフリをする方が仲良くなれる。
自分1人で解決できるような簡単な問題でも、2人で決めることが大事らしい。
彼女はパパと一緒に仕事をする機会が増え、彼女のフォローをパパがする。だから彼女との接点なんて無いに等しく、無視するような態度でいた。彼女からは一度として頼りにされなかったし、彼女の相談相手はいつもパパだった。
彼女を酷く罵っていた上司。自分やパパが間に入って立ち回り、彼女をフォローしていた。その罵っていた上司が病状の悪化に伴い退社することになった。
「首とか絞めておきたかったな、ギュ-ッて」
彼女が数年に渡る憎しみを微笑みに隠しながら言う。
「復讐するチャンスなくなったね」
「うん。逃げられたみたいで悔しい…」
そう彼女は握り拳を作るようにして言ったけれど、結果的に彼女の敵対する上司がいなくなることで自分の役割も終わりに感じる。彼女を守ること、彼女に教えること。彼女にあげられるもの…、それが完全に無くなった。そうなると自然と仕事への興味も失い、職場の魅力も何も無いつまらない日常へと変貌する。
彼女に嫌われていれば、嫌いな自分を見られずに済む
嫌われているほうが居心地が良くて安心する。頼りにされたいのに頼りにされない自分に苛立ち、環境に上手く立ち回れない自分も嫌いになる。彼女のことを考えるたび、自分が否定されるようで自己嫌悪に陥る。
だから彼女のことは好きだけど、ほんとは大っ嫌い!
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