行き止まり

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会社の女の子に紙切れを渡して言う。



「仕事を進める効率的な手順を書いたからさ、ちょっと見て」




じっくり目を通して読み始める彼女。1項目ごとに納得するように頷いていた。それから顔を上げる彼女に言う。



「いつもこの辺が出来てないから、仕事する前に絶対にした方が良いよ」


「わたしもそう思うんだけど、でも時間がねぇ…」




そう反論をしてくる。確かに仕事に集中できる環境じゃないし、何より彼女は負けず嫌いだ。彼女に言わずに勝手に手伝ったとき、彼女はそれに対抗するように自分で考えたものを出してくる。彼女にライバルだと思われているようで、



「教えようか?」




と聞いても、「あとで完成したらね」と断られた。それで返事を待っていたけど、結局頼りにされることは無かった。その代わり彼女の信頼する上司である『パパ』に相談して結果を出したようだ。



アドバイスのあとで彼女は変わらない環境にうんざりだと言った。パパに教えても、結果的に彼女自身が頼られることにイライラしていた。いつか彼女とパパの意見が衝突して喧嘩するような気もするけど、パパは舌を出す姿を見られるなんて失態はしないだろう。それでも彼女の感覚は鋭いから、すでに気付いていながらパパを利用しているかどうかまでは計り知れないけど。



彼女の愚痴を聞いてから、さりげなく聞く。



「あのさ、連休はどうするの?どっか行くの?」


「うんとね、友達が来て、それから友達の家に行く…」




ふーん、なんて答える。さらに予防線を張られるように間髪いれず彼女が続ける。



「あとね、プール行く!」




連休の前に聞いた理由は誘ってもダメだろうと感じていたし、誘うつもりも無かった。けれど、あきらかに3つの予定を言ったことに嫌われている気持ちを垣間見た。単純に下心なしで聞きたかったのに、変に意識されていることにショックを受けた。そして、焦りから度々彼女を誘っていたことを後悔した。



“女の子は『好き』と言われる瞬間や、誘われる隙を見せてくれない。”




誘われ慣れている女の子は断り方も手慣れている。会話の誤魔化し方が上手いから好みじゃない異性のアピールなんて簡単に逃れられるみたいだ。彼女の側で絶望したように呟く。



「仕事も人生も行き詰まったな…」




そう言ってから打ち合わせに出向いた。数十分後に戻ってきて、彼女の側を通るときにもう一度言う。



「行き詰まったなぁ…」


「…人生が?」




そう振り向くこともなく聞いてくる彼女。



「いや、今は仕事…」


「珍しくない?」




『人生』と答えていたら彼女も振り向いてくれたのかも知れないけれど、『仕事』と答えたせいで彼女と目が合うこともなかった。人生の選択は難しい…。



今は彼女のことが好きだけど、嫌われているかもしれない。でもその関係が1年後になったら、どう変わるだろう。彼女の容姿は老いによって確実に衰えてしまう。



「1年後でも“好き”って言える?」




自分の中にいる彼女のイメージが言う。答えを見つけ出せずに考えているような素振りで誤魔化していると、さらに追い詰めるように言われる。



「5年後も、10年後も、20年後だってずーっと死ぬまで好きでいられる?そういう覚悟があるなら付き合うけど?」




男の価値は年季によって磨かれて、女の価値は時間によって失われる。すなわち、互いの価値が並んだときに付き合えるはず。こんな考え方は好きじゃないけど、その瞬間にしか恋愛ができない気がしてる。



5年後、10年後でも彼女が好きでいられるのか。ただ自分の寂しさを埋めたいだけの自己満足じゃないのか。ただ彼女と関係を持ちたいだけなんじゃないか。そんな自問自答をするけど、存在しない答えなんて出てくるはずがない。それは恋愛経験がないから。




『彼女』が欲しいという漠然とした理想を求めるより


好きな女の子を見つけて『彼女』にする



こういう考え方で行動してきた。だけど好きになった女の子さえも『彼女』にできなくて、もうどうすれば恋愛できるか分からん。よし、死ぬか。


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このページは、karinがSeptember 12, 2008 12:00 AMに書いたブログ記事です。

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