クールダウン
お酒の勢いを借りた会社の女の子は、男口調になって言う。
「思ったら言えよ?わたしも感じ悪いとか言うから…」
彼女は以前のことを思い返すようにして言う。
それからは彼女は会社のことを1人で話すのだけど、そのお酒の席で彼女から「空気が読めない人」と言われた。よし、死ぬか。
人との関わり方が苦手で、だからこそ仕事に没頭する時間を過ごしてきた。仕事の能力を高められたのは恋愛だってしてないからだ。けれどそれを理解せずに、ただ「能力があって凄いね」なんて言われるのは苦痛だ。犠牲にしてきたものがあるというのに。
会社の女の子は今では信頼する上司にベッタリで、愛称で『パパ』と呼んだりする。彼女が求めていたのは結局のところ、自身が嫌っていた夫婦ごっこなんじゃないかと思う。
朝からパパと煙草を吸いに行って20分雑談。お昼はパパと一緒に社内ランチして1時間。おやつの時間に仕事の相談がてらに休憩30分。夕方さらに30分話して、帰り際にまた煙草吸いに行って30分話したり、帰宅前に電車乗る前の一服でさらに、さらに…。
そうやって、ずーっとパパと話してる。もうダメだな。死ぬわ。
“彼女が頼りにしてくれれば、本気を出す”
そう相変わらずのように考えだけ先行していたけど、それは結局『明日から本気出す』と言うような、いつまでも出すことのない本気と同じ意味だったんだなと、ダメな自分に気付く。本当に彼女から頼られたら傷つくのか怖くて逃げ出してしまうかも知れない。
彼女が愛想尽かして、パパのもとに行くのも無理ないかなと思った。女の子の前だからカッコつけてるように見えたのかも知れないし、何より頼りになるようなタイプじゃない。
恋愛はあきらめるかな。
なんて冷めた気持ちでいるのに、心を探るように言葉を探し会話を求めてくる彼女。何か問題が起こると心配そうに側に来て様子を見に来る彼女。
もう放っといて突き放してくれたら良いのに、女って面倒だ…。
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