仕事を教えるとき
会社の女の子があたらしい案件を任せられていたことを不安に思って話しかけてみた。
「それ、できる?大丈夫?」
彼女もすこしだけ不安そうな表情を見せたが、大丈夫と笑顔で答えた。自分ならこうするだろうって方法を彼女にアドバイスして、彼女の言葉を信じることにした。
それでも、ちょこちょこ彼女の席の側を通るたびにモニターを覗きみて進行状況をチェックする。そのまま声をかけて、彼女にどう進めるのかを確認をし「また見に来るから」と伝える。それを、何度か繰り返すと彼女は男っぽい口調でこう言う。
「そんなに、心配するなって。わたしは大丈夫だから。」
そのあと、お昼に出掛けたついでに彼女に見本となる資料を持ってきた。暑い中で、文字通り足を使って色んな場所からかき集めてきて、それを彼女に見せると「たくさん持ってきたね」とすこし笑われた。
彼女に言う。
「ごめんね。でも、資料は多いほうが良いでしょ?」
「うん、ありがとう」
「別に見終わったら捨てても良いからさ…」
そう言うと、ブンブンと首を横に振る彼女。これがかわいい。物を大事にするタイプだからなのか、そんなつまらないものであっても『捨てる』とは言えないらしい。
その後で、すこし回り道をしたけれど結果的に上手くいった。
「でも、ここは表組みにした方が良いんじゃない?」
そう言うと、笑い声を押し隠すような行動をとる彼女。どうやら、ツボに嵌まったらしい。というのも、以前に同じことを言っても彼女があえて無視をしていて。彼女は、頑なに自分の信じることを貫き通した。それを、数日おいて同じことを伝えてきたことが面白かったらしい。
すこし落ち着きを取り戻した彼女に言う。
「ここは、こうしたくない?」
「絶対に違うと思う。わたしは、今の方が好きだけど…」
ここでどう説得したとしても、平行線を辿るだろうと容易に想像ができた。そこで仕方なく折れて、すこし微笑んでから彼女に言う。
「なかなか、頑固だね」
「うん!お互いにね!」
そう言って、悪意が全くない純粋な笑顔で返してくれる彼女。それがすこしだけ、彼女と付き合ってるような感覚に陥った。
最近も彼女の仕事についてアドバイスをすることが多くて、何度か「こうしたら良くなる」というアドバイスをした。彼女が知ってることに対しては、それなら大丈夫と背中を押せる。それでも彼女がどこまで理解をしてるか分からないから、もの凄く簡単なことまで伝えてしまうこともある。
彼女が知ってることばかりアドバイスしていたときに、
「なんか、教えることあんまりないね…」
そう彼女の側で呟くと、何も言わず表情を伺うようにして次の言葉を待つようにされた。すこしの間をおいてから、彼女に言う。
「席の後ろを通るたびに、いちいち言わない方が良いのかな」
すると彼女は無言で大きく首を横に振った。これがかわいい。これをされると、自信の無いことの全てを彼女が全否定してくれるようで自信が持てる。彼女の色んな仕草を見ているけど、それが一番魅力に思う部分かもしれない。
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