男加減
「女の子が大きい手袋とかしてると可愛く見える」
「あー、そうだね。わたしもそう思う」
「ディズニーランドとかでさ、よく大きな手袋とかしてる子っているじゃん」
「うん、いるいる」
「そういうのしてみたら?あの大きな耳を付けたりさ…」
「えー、しないよ」
「行ってみると楽しくて付けたくなるらしいよ?」
そう彼女に聞いてみると、プイッと別の方向を向いてから
「絶対にしねー」
と、不機嫌そうにして答えた。ツンデレ。
彼女は女子だけの学校に通っていて、そのときの話をしてくれたことがある。
「女子校でも宝塚みたいに男役と女役っていうのがあってさ、わたし男役だったんだよね」
そこで上司が彼女に言う。
「前に付き合ってた彼氏の影響で男言葉になったの?」
「そういうのじゃない。それは、実家から出てからだから…」
彼女はときおり男らしく振舞って男言葉を使う。それで強がっているものの内面は弱気なところ、彼女が見せるそのギャップがとても魅力的に見えてしまう。
帰り際になって、週末最後の雑談をしに彼女の側に行くと彼女が聞いてくる。
「今週は忙しかったね?」
「そうだね、死ぬかと思った…」
どこか寂しげで不安な表情を見せ、おかしな会話の間を空ける彼女。それを安心させるように続けて言う。
「まあ、死にはしないけどさ」
「…うん」
すこし表情を緩ませて答える彼女。
その後で他愛のないことを話していると、瞳に焼き付けるように顔ばかり見つめてくる。そんな彼女に質問を投げかけても、半分上の空で何度か「うん?」と首を傾げて、そのたびに同じセリフを繰り返すように言った。
話を理解して聞くことよりも、一生懸命に話をする異性を見ることの方が優先されるように。
もしくは、そういう素敵なことじゃなく、彼女に話しかけるときだけ自信がなくなり、話すことが極端に怖くなる。その結果、他の人と話すときよりも声を張れないことがあって、それが何度も聞きなおしてくる原因になっているのかも知れないけど。
互いの目を見つめているのに、意思疎通ができない状況を不思議に思った。
そんな目で見続けてくる彼女に言う。
「今日は持ち帰って仕事することにする」
「あれ、家に仕事は持ち込まないタイプじゃなかった?」
ずっと以前に一度だけ話していたことを覚えていた彼女に驚いた。
「うん…。でも、やらなきゃ仕方ないじゃん」
そう答えると、『真面目さ』が評価されるように彼女の表情は明るくなった。
今までだと面倒になって「時間がないから」と言い訳をして途中で投げ出したりしたけれど、真剣に向き合うような姿勢を見せることで、彼女に見直された気がする。
女の子は熱心な異性が好きみたいだ。
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