喧嘩する
「フェロモン剤って言うのはね、要するに虫同士の“交尾”を邪魔して虫を寄せつけないようにするの」
なんて会社の女の子の説明を聞いていた。恋愛未経験だと“交尾”という言葉にも過剰に反応しそうで、顔に出ないようにスルーするんだけど。そんな彼女の説明から、些細な意見の衝突が始まることになる。
それまでに自分が手伝っていた彼女の仕事を彼女は上司に報告して、その後は上司を頼るようにして作業を進めていた。そのことで
昨日手伝ってあげたのに、どうして今日は頼ってくれないんだろう
そんな気持ちが芽生え、彼女に対してすこし苛立っていた。そういう状況で彼女から新しく仕事の依頼を受けた。
「それでね、ここは…こうして欲しいの」
「…うーん」
「言ってること分かる?」
「全然わかんない」
そうやって彼女の説明をやや否定的に受け答えしていた。彼女の説明は分かりにくかったし、何をしたいのか彼女自身も理解してなかったようだ。
「ここは…こんな感じにして欲しくてね」
「じゃあ、この2つはどう違うの?」
そう聞くと、本当に困ったような表情をして目を見つめてくる。少しの間をおいてから、彼女が口を開いて
「じゃあいい、わたしがやるから…」
そう言って、手元の書類を集めようとする彼女。その行動に焦って、待って!と叫んでから、続けて言う。
「いや、やりたくないわけじゃないんだよ…。分かる?」
「…。」
これは困った、彼女の気分を悪くさせてしまった。そう思って、すこし泣き出しそうな瞳をする彼女に言う。
「ごめんね…、ちょっと感じ悪かった?」
「…うん、すこしね」
「ごめん…」
本当に心から謝った。
その仕事は営業から彼女に来ていて、それを彼女が説明するという伝言ゲームになっていた。彼女は責任感の強さから自分が説明しなきゃいけないと思い込んでいたので、それは直接営業から話を聞こうと提案をすると彼女も納得して2人で話を聞いた。
その説明を受けたあとで、再び彼女の席に戻ってから
「さっきは、ごめんね」
と、甘えるように謝ると、彼女は言う。
「うん、大丈夫。気にしてないよ」
「本当に?」
「仕事だったら意見の衝突とかもあるものだからね」
無理に大人っぽい意見、当たり障りのない言葉をぶつけてくる彼女に距離を感じてしまい、もう一度謝った。すると彼女が言う。
「気にしてないから、良いよ」
「うん…。」
「気にすんなって」
「でも、感じ悪いって思われたしさ」
「それはごめんね」
「それに、嫌われたくないし…」
「わたしなら大丈夫だよ」
「じゃあ後でさ、お詫びに何かおごるよ。何が良い?」
彼女は何でも良いと答えたけれど値段も高めのアイスを買ってきて、仲直りの印として彼女の席の近くに座って2人で話しながらアイスを食べた。
食べていると、営業がやってきて一言。
「なんか、幸せそうな顔して食べてるね」
そう言われ、すこしお互いを意識する。彼女は食後のデザートだからなんて言い訳をする。さらに、営業がこちらを指差して
「今は、彼と一番仲良しなの?」
そう彼女に聞くと、すこし悩むように視線を下に落としてから営業の顔を見て微笑むことで答えを誤魔化した。これは…!そう思ったけれど、彼女の表情は「仲良しだよ」とは見えなくて、「まあ、2番目くらい?」と言ったように見えた。
些細な喧嘩をして、仲直りをしたこと
そうやって、2人の関係は前より近づいた気がする。ここからの距離を詰めていくためには、
まずは積極的に自分をアピールをしていく
の次の段階。
そのあと、ふと身を引くと女の子の方から心配してやってくる
盆休みもあって彼女とは文字通りの距離を置いてしまうけど、これじゃ身を引くとは違う気がしてる。
「来週月曜まで、4日間も会えないの寂しいな…」
明日こう言ったとしても、そんなことないだろってツッコミいれられるんだろうけど。
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