彼女の自信
「ここは、こうして…」
「じゃあ、こっちはどうするの?合わせる?」
「わたしは、合わせない方が良いと思うけどどう思う?」
「うーんと…」
会社の女の子の案件を手伝うことになって、彼女からいろいろな指示をしてもらう。彼女の側に座らせられ、机に修正指示を置いて話をする。経験はないけれど、家庭教師のお姉さんに勉強教わってるような気分。悩んでいると彼女は顔を近づけ表情を覗き込むかのように話す。
「ねえ、どこが分かんないの?」
「ここなんだけどさ…」
とペンで分からない場所を指すとさらに2人の顔の距離は縮む。その距離、数十センチ。すこしの緊張感。狙っているのか、一生懸命だからなのか分からないけど一番近い距離にいる。完全にパーソナルスペース。他人には入って欲しくない距離。
「ここはこうで、こうしてね。」
「わかった、やっておく。」
その後言われたとおり修正し、彼女に見せた。「ありがとう」と言われ、内容を確認する。
「ここは、もうちょっと、こんな感じで…」
「うんうん」
もう一度彼女の指示を聞いて修正したものを2つ用意した。1つは自分ならこっちを選ぶだろうA案。そしてB案は、彼女が「この方が良くない?」と指示したもの。その2つをクライアントに選ばせた。
後日、電話がかかってきて、彼女が報告にきた。
「こっちの、B案だって」
「もう決まったんだ」
「うん」
「A案の方が無難だしそっちが選ばれるかと思ったけど、さすが分かってるね。やっぱり才能あるんじゃないの?」
そう聞くと、嬉しそうな表情をする彼女。今まで、彼女は自分がした仕事に対しての自信が持てていなかった。それは、周りの人間が彼女に対して「出来ない」というレッテルを貼っていて、そのことを繰り返し刷り込まれるように何度も言われ自信喪失していた。
しかし、彼女と一緒に仕事をして「出来る人」だと確信した。彼女の周りの営業らの方が仕事をできていない。都合よく雑務を押し付けたいがために「出来ない」と言っているようだった。だから彼らに対して自分は威嚇するように牙を向けていたら、「あいつは気に食わない」という判断をされ無理難題をふっかけてきていたんだろう。
とにかく、彼女の自信を取り戻させるために行動をした。彼女と仕事をすることは楽しいのだけど、他の人間や仕事自体に興味がない。その両者を天秤にかけてゆらゆらしている状態。上手くデートにでも誘って、早々と今の仕事に見切りをつけて互いに違う職場で新しい一歩を踏み出せたら良いのにな。
とか、そんな甘い考えをめぐらせながらデート情報誌のようなものを読んでいたら虚しくなった。こういうものは彼女がいて、一緒に決めるから楽しいんじゃないかと…。
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