お揃いボーダー
「犬は飼い主に似る」という言葉がある。そして、街中で見るカップルもどことなく雰囲気だったり、顔のつくりも、格好もどことなく似てる。そんな気がする。
「2人の服ってそれ、揃えてるんでしょ?」
「え、そんなことないですよー」
「ていうか、この2人仲良いよね。この前ニックネームで呼んだりしてたよ。」
だいぶ以前のだけど、お酒の席での会話。一緒の仕事を始めたくらいのことで、彼女は勝手にニックネームを付けて呼んでいた。そのことを指摘されて、すこし恥ずかしがる彼女。お酒の席のためか、下ネタ大好きな若めの契約社員に絡まれる。
「服の色とか、前もって何着ていくか2人で相談したんでしょ?」
「別にそんなことはないんですけど、ねー?」
目線を送る彼女に返事をした。さらに勢い付く契約社員。
「ていうか、もう2人って…。ヤっちゃったんでしょ?」
なんてことを…。結局その場は彼女が上手く誤魔化したけど。それ以来、何故かニックネームで呼ばれなくなった。恥ずかしかったのかな。
そのあとに彼女はシューズを変えた。それが自分のと同じメーカー、デザインの色違い。誰でも履いてるくらいだから、特に気にかけなかった。
その数週間後、自分のシューズも変えようと探しに行ったが良いものが見つけられず、色だけを変えることにした。モノクロが好きで決めたけど、偶然にも彼女のバッグも似たモノクロのトーンだった。彼女のバッグはありふれているデザインというわけでもない。全く意識してなかっただけに、不思議だった。
それから彼女と一緒にいると、似たような仕草や、癖なんかもどこか意識的なように真似を始める。彼女がこっちの仕草を真似して、自分も彼女の仕草を真似するように。
そんなことがあって先日、彼女が気に入ってる印象のあるボーダーの服を見つけたので即購入。それを着て行くのに抵抗はあったが、もう自暴自棄。目立つけどインナーに消極的に着て彼女と会う。だが、そんな想いも虚しく彼女はその服装に関しても何も触れなかった。物悲しい気持ちになる。
その次の日、つまり今日ということになるのだが、彼女はそのお気に入りのボーダーの服をインナーに着てきた。彼女の服装を意識してなかったし、最初は気付かなかったけど「そう言えば…」とよくよく見ると全く同じ配色、同じライン幅のボーダー…。お互いに無意識に意識してるのか、あるいはどちらかが偶然を装っているのか。不思議と似てきている。
「あれ、今日の服装なんか似てない?」
なんて会話があるといいな…。それで、2人仲良しだねなんて周りにからかわれて。それだけで一週間は幸せな気持ちに浸れるのに。あー、何も言えない。
「キミは恋人って言うより…、弟ってタイプかな?」
以前、彼女はそんなことを言っていた。ことあるごとに関心を向け、孤立しそうな女の子と自分の間でやりとりをしたときにも、確認のために2人の間に立って行き来していた。それで心配そうに、2人の仲を取り持ってくれる。たぶん、誰かと誰かが喧嘩したときにでも彼女は間に立って、どっちも慰めたり、仲良くさせようといろいろ考えるタイプな気がする。
恋人って言うより…保護者??
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