恋の駆け引き
「パスタ、食べたくない?」
そう会社の女の子に聞かれて、今週2度目の一緒のランチに出掛けた。午前中から彼女に積極的に話しかけたり、アドバイスをしたのが良かったのか、誘われるときのタイミングは優しくしたあとか事件があったときに多い。
パスタを食べながら子供の頃に親が作った料理の不満を語っていて、彼女にこう言う。
「だから、おかしな料理ばっかり食べさせられたよ」
「そうかなー?」
「有り得ないものとか料理に良くはいってる…」
それに彼女は頷くように目で合図して、パスタを口に運ぶ。そして、口の中のものを片付けてから言う。
「キミの奥さんになる人は大変だね」
なってくれますか?
そんな互いの距離を近づける出来事があって帰宅直前。暇なので彼女に話しかけて、たくさん質問をしていた。
「じゃあさ、兄弟で上と下ならどっちが欲しかった?」
「うんとね、わたしはお兄ちゃんが欲しかったかな。」
「そうなんだ」
「そうそう、親に『お兄ちゃんが欲しい』って言って困らせたことがあったよ」
「自分の場合は逆にお姉ちゃんが欲しかったな…」
そう言うと、妙に納得した様子を見せる彼女。そして、ビシッと人差し指を立てて言う。
「そう!年上の異性を求めるのって、わたしと一緒の考えだよ」
彼女は双子で、姉妹2人で同棲している。けれど性格が合わないらしく自分が面倒を見ているようだと愚痴を言っていた。だから、頼れる兄的な存在を欲しがっているんだろう。
続けてこんな話を切り出してみた。
「じゃあさ、年上好き?」
ドキドキしながら聞く。どういう反応をするのか注意深く観察しようと思う間もなく、彼女は答える。
「年上好き!」
「…」
あまりに堂々と宣言されたものだから、言葉に詰まって間が空いてしまう。そこで、彼女がさらに言葉を続ける。
「まあ、楽だからね…」
自分が彼女の年下である以上、恋人候補にはなれない。
だったら、年上と付き合っちゃえば?
そう思って突き放してしまう。こうして、開きかけた心の扉は鈍い音を立てて再び閉ざされてしまう。
彼女が理想とするタイプは熱血な感じで、佐藤隆太が好きらしい。その若々しくてエネルギッシュなイメージと、逆に年上で彼女を優しくエスコートしてくれる今の彼女の上司みたいなイメージ。
その相反するタイプを求める彼女は、一体どんな恋人を理想としているのか…。さらにそれに対して自分がどういう位置にいるのか。
女の子は基本的に年上好き
それは、リードされたいから。従ってる方が楽だから。
「わたしは好きな人は追っかけるタイプだから…」
そう言う彼女が、年上の恋人にくっついていくような姿は容易に想像ができる。彼女の理想に近づけない。
つらい思いをするだけなら、もういらない
そうして、彼女との話を中断するように言う。
「帰っちゃって良いかな…」
ウンと頷いてから表情を読むように目を合わせてくる彼女。それに同じように頷く合図を返す。
「じゃあ、おつかれさまです」
そう周囲に対して言うと、彼女が寂しげな表情をしてつぶやく。
「帰っちゃうの?寂しい」
一日で彼女に対する気持ちがいったりきたりの、駆け引きばかりしている。好きなのか、好きじゃないのか互いの気持ちの探りあい。こういう時期が恋人と付き合う中での一番楽しい時なのかもしれない。
いや、恋人がいたことは無いんだけど…。
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